不思議の国のお伽噺。
寝転がっていたのは女の子の部屋。起き上がり見渡すとわかるこの部屋は。
ここは愛莉の部屋。
違う世界の私の部屋。
近くのベッドには寝ている私がいた。
私はベッドを背にして天井を見上げる。
何故、こんなことになったんだろう。
辛い苦しい。
記憶を、思い出す際に起こる物語が辛い。
そして、そんなことを考える暇を与えてくれた静寂はある一人の少女によって破られる。
『んー…朝…?』
目を擦りながら起き上がる少女。記憶がだんだん蘇る。
次に言う言葉、私わかる。
「『ヤバイッ!遅刻だッ!!!』」
きれいにハモる声。私に気づかずに髪をぐしゃぐしゃにする様子を見る限り、私は見えていない。
『やばい、待ち合わせ間に合うかなあ…ッ』
携帯をいじる愛莉。
待ち合わせ相手は、幼馴染みの
根岸光輝。
愛莉の行動一つ一つで私の中に記憶が流れてくる。
『(光輝い…待っててくれるとか優しいなあ)』
愛莉の 心の中 までもがダイレクトに私の中に流れ込んできていた。
そうしてバタバタと着替えが始まり制服になり家を出る。
そうして次の瞬間、私は目を見開いた。
『光輝ぃーッ!!』
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