不思議の国のお伽噺。
「へ…?」
彼女が言っていることは、私にはあまりよく分からなかった。
でも、すごい心配してくれたことはわかる。
それに、出てきたってことは、やはり…私のせいで出てきた、歪んだあかずきんということなのだと思う。
あかずきんは、茶色のかごを落とし、私に抱きついた。
私より少し背が小さいあかずきん。
でも、ずっと大人っぽく見えた。
「おかえり、アリス…」
「ただいま…あかずきん…」
…私の口からは、ビックリするくらい自然に言葉が出た。
私の中の記憶の混乱は、少し落ち着いていた。
たぶん、私は少し違う世界にいたのだろう。
その確証は、皆に言われる言葉。
〝おかえり〟
〝帰ってきた〟
この世界で存在していた私。
何かがあって、どこかの世界に行った。
そして、〝藤荻愛莉〟は、違う世界で存在していた私の名前。
〝彼〟とは、私が愛した人。
ここまでは、今まで進んできて私並みに推理したこと。
これは、あくまで推測で、勘。
殺されたことに、きっと〝彼〟が深く関わっている。
本当の私や、違う世界にいた私のことは、焦らずゆっくり探せばいいと思う。
さっきみたいに、混乱して推理があやふやになるより、ゆっくり進むほうがいいだろう。
焦らなくても、真実は確実に私を蝕むだろうから。
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