不思議の国のお伽噺。
「大体今回だって、猫、あなたのせいじゃ「違うのっ!!」
自分でも、驚くくらいの大声が出た。
「ち、違うの!!
今回だって、チェシャ猫のせいじゃなくて…!!
その前に歪んじゃったのも、チェシャ猫のせいじゃないの!」
心は、本能的に、チェシャ猫を庇う。
どうやら、私の無い記憶の中に、一度同じように歪んだことがあったようだ。
そのときも…チェシャ猫のせいに…?
「わ、私が悪かったの!
だからっ…チェシャ猫をせめないでっ!」
頬には涙が伝っていた。
あかずきんは、困ったようにこっちを見た。
「アリス…
何も猫のために…」
〝泣く必要はない〟
と言いたかったのだろう。
記憶の無い今の私にとっては、チェシャ猫が全てだから。
きっと、ずっと昔からなのだろうけど。
すると、チェシャ猫は後ろから私の目をおさえ、優しく引き寄せた。
「すみません、
…ハーフレッド様、急ぎの用があるのでは?」
「…!!
そうだったわ…おばあさまの家に行かなくては…。
では、じゃあねアリス。
また会いましょう!」
そう言ってあかずきんは去っていった。
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