不思議の国のお伽噺。
「うぅっ……ごめんね、チェシャ猫…っ」
「本当だよ、俺のためになくなんて…
本当アリスは…
昔から変わらないね…」
チェシャ猫の声には、精一杯の優しさが含まれていた。
「さぁ、早くあかずきんを追いかけなきゃ。
アリス、彼女の歪みを解くんでしょう?」
チェシャ猫は、歩いてるあかずきんを指差した。
私が歪ませた世界。
私が…直さなきゃ。
とりあえず涙を拭って、私は走った。
あかずきんの元へ。
走っている私を、見つめていたチェシャ猫。
その表情を、感情を、私は、知ることはないんだろう。
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