不思議の国のお伽噺。
「ア…リス…?」
目を虚ろにさせ、血をたくさん被ったあかずきん。
私は、あかずきんを抱き締めた。
抱き締めたとたん、目から涙が溢れた。
「私の…せいで…
私が…物語ごと…歪ませた…っ!!」
わたしはあかずきんの肩に、顔を埋めた。
顔に血がついても、構いやしなかった。
…苦しいのは私じゃないのに…。
あかずきんなのに。
私は、更に力を込めた。
「元に…戻れ…。
赤い頭巾の…おひめさま。」
頭で浮かんだ言葉を並べる。
あかずきんの頭巾には、オオカミの血なのか、私が流した涙の跡なのか、分からない位のシミがたくさんあった。
『ありがとう…アリス』
消えていく前に囁いたあかずきん。
何でお礼を言うの?
私は、もっと蔑まれてもいいはずなのにっ…。
私が言葉を発すと、あかずきん、オオカミ、血、小屋は、光に包まれ、消えた。
きっと…これから本物のあかずきんのお話が繰り広げられるんだよね。
私は、腕に残ったあかずきんの温もりを抱き締めた。
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