不思議の国のお伽噺。
rp.5 失われた、私の姿の行方。
歩いていると、赤い頭巾を被った、目ぱっちりの少女が楽しそうに歩いていた。
本物の話が始まってくれたことに、私は安堵のため息をついた。
あかずきんに見つからないように、木の影に隠れ、歩く。
飽きるぐらいの緑。
突然、私の頭の中には、深緑のローブの彼が出てきた。
そういえば…あのとき言っていた、私の容姿のこと。
違う世界にいた私のこと。
思い出したいけど…思い出すのが怖い。
また物語を歪ませて、それを最後まで見届けるのが辛い。
拳を、きつく握った。
「…っ!!」
「…アリス!?」
突然、頭がいたくなる。
何かが、出て来そうな感覚。
吐き出しそうだ…。
…でも必死に止めようと自制する。
響くチェシャ猫の声も聞こえなくなるぐらい、痛みは増していった。
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気付いたら、私は、一面真っ白な空間にいた。
「(ここは…?)」
「おはよう、アリス」
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