不思議の国のお伽噺。
舞踏会の日。
「「「行ってきまーす!」」」
「はいはい、あばよ!」
ルンルンで、馬車に乗って、お城へいくおば様たち。
それを、しーちゃんが名残惜しそうに見つめていたのを、私は上から、しーちゃんの部屋から見た。
部屋に戻ってきたしーちゃんは、タバコを吸いながら椅子に座っている。
「…しーちゃん」
「……なんだァ?」
「本当は、舞踏会行きたい?」
「!…んなわけ…」
ねェ…と言いかけて、しーちゃんは黙った。
すると、肘を机の上にのせて、頭を下げ、話し始めた。
「この、裏のアタシが出てきたときに、女に見られたことねェんだ
そりゃそうだよな、こんなにガサツでよォ…
でもこんなアタシでも、憧れてはいたんだぜ?
いつかは、王子様に会ってみてぇとかよォ
…わらっちまうよな」
私は、黙って聞いていた。
「表のアタシは、そんなこと思っても言っても、似合ってんだよ…
アタシと正反対で、可愛くてよォ…
なんで、こんな大事なときにアタシが出てきちまったんだろうな…」
「…」
「別に、アリスを責めてる訳じゃねェんだ…
でも、やっぱ行ってみてェよな!
このアタシで、舞踏会!」
しーちゃんは、タバコをくわえて笑った。
私は、泣いた。
「ア、リス?」
「しーちゃんは、今は確かに、ガサツで男勝りで、可愛いより、かっこいいのが似合うよ!」
「…はは(苦笑)」
「でもねっ、私そんなしーちゃんも可愛いと思うの!
だからもっと自信もって、舞踏会に行こうよっ!」
「!…あァ」