不思議の国のお伽噺。







「ねぇチェシャ猫」



「なんだいアリス?」



「結局お城に行くならさぁ、しーちゃんに言ってつれていってもらったらよかったんじゃない?」



私は、チェシャ猫におぶられ、お城まで飛んでいた。
そう言うと、チェシャ猫は笑顔で、いいんだよっていった。



「だって、こっそり見ないと、シンデレラは女の子っぽくなれないでしょう?」



チェシャ猫は、私を見ながら静かに微笑んだ。


…、それもそうか。




「そう、だね!」




そして私たちは、急いでお城へと向かった。















気が付いたら、私はまた真っ白な空間にいた。



「え…?」



『アリスが思い出すのは、違う世界のことだけ?』



そこには、レイがいた。
レイはそれだけ言うと消える。



『僕たちを、思い出そうとはしないん?』



後ろからの声に振り向くと、後ろには、金髪にシルクハットを被った青年がうつむいていた。
そしてまた消える。
これはいったい、何をしたいの?



「…でも今まで、名前とかは、皆に言ってもらったし、姿だって見えているよ?
これ以上何を思い出すの?」



『僕たちの、こと』



また後ろから。
寝ている美青年。
言っては消え、言っては消えの繰り返し。



『アリスは、忘れたの?』



私に抱きつき、囁くように言ったのは、オレンジの髪をして、髪の毛を高い位置で結った青年。



『俺たちは、忘れたことなんてないよ。

アリスは、忘れた?』



タバコのようなものを吸い、寝袋にくるまった、おじさん。



『『『『『私達のこと』』』』』



勢いよく振り替えるそこには、顔こそは、見えないが、たくさんいるお姫さま。



『『『『『アタシ達のこと』』』』』



それは消えることなく姿を変える。











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