不思議の国のお伽噺。
動きが止まるシンデレラ。
馬車の中に乗り込んでも、発車させようとしない。
「好きだ好きだ好きだーっ!
一目で惚れたんだ、何が悪いバカヤローっ!」
王子はシンデレラに向かって叫ぶ。
タイムリミット,2分。
「逃げれると思うな!
お前が逃げたら、国家総動員で探して俺様の嫁にしてやる!」
王子は、必死に息を切らしていた。
タイムリミット1分
シンデレラは、振り返り叫んだ。
泣き叫んだんだ、正確には。
「アンタが今日恋したのは偽のアタシだ!
アタシなんかよりいい女は山ほどいるんだ!
アタシ以外とくっつけ!
それに、そんなに見つけたかったら自分で探せ!
大バカヤローっ!」
「…おもしれぇ…」
王子が呟いた一言は、彼女には届かない。
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馬車は、どんどん進んでいく。
シンデレラは、顔を覆っていた。
タイム、アウト
全て、元の姿に戻る。
馬車はカボチャに。
馬はネズミに。
ドレスは服に。
その他も、元の姿に。
「…」
夜の闇に消える、シンデレラの表情。
月を隠した雲が退く。
露になるシンデレラの顔、それは。
何よりも赤い、シンデレラが願った、女の子の表情(かお)だった。
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