不思議の国のお伽噺。
gp.5 トモダチトノキオク。
チェシャ猫におぶられ、私はまた空を飛んでいた。
チェシャ猫の背中はみるみる涙で濡れていく。
泣いていると、私は、いつのまにか眠っていた。
こんどは、真っ暗な空間にいた。
誰もいない。
あたし以外。
『アリスは、覚えてる?』
…何を?
『私たちが、初めて会った日のこと』
……。
『…、これから、あなたの友達の記憶、全部流すから…
ゆっくり、思い出しなさい』
声が消えると、そこには、泣いている私がいた。
幼い私。
…声をかけてもいいのかな。
『うぅっ…うぇーんっ!!
どうせ、皆あたしのことっ…怖がってっヒック…取り入ってっ…こよっと…ヒッ…してるんだぁぁぁぁぁぁあ!!!』
泣いている私の意図が分からなかった。
私の何が怖がられていたと言うのだろう。
何、いったい?
『アリス様…』
『様なんてつけないでっ!!
もうこんなとこにいたくない!!』
幼いチェシャ猫。
髪は短く、鈴とリボンはつけていない。
『あ、アリスっ…さん』
『アリスでいぃぃい!!』
『アアア、アリスッ!
泣かないでよ…』
『ふぅ…うっ』
『あれ?
何泣いてるの?
アリス』
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