不思議の国のお伽噺。
『はぁっ…、はぁっ!』
『アリス様っ!
お待ちください!アリス様!』
追いかけてくるチェシャ猫をかわして、私は城から抜け出し、町へ出た。
『はぁっ、ここまでくれば、だいじょぶ、よねっ??』
『はぁーっ…』
後ろを見て、追っ手がいないことに安心して前を見る。
すると、目の前にはため息をつく男の人がいた。
「(あれは…ジェミニ…
てんちょー…)」
私が見たときより、幾分若い、てんちょー。
店のオープン前なのかな。
段ボールを持って、店に入っていく。
だけど、その表情には、疲労が出ており、大きなため息が彼から聞こえてくる。
オサナイワタシは、彼に近づいていった。
『何をしているの?』
『!、あ…あぁ、店を立ち上げる準備中さ』
てんちょーは、私に気付くと、無理やり笑った。
『ほんとに、ねー…』
『…楽しみじゃないの?』
『?』
『…、だから店を立ち上げるのが楽しみじゃないのか聞いてんのよ』
な ぜ 喧 嘩 腰 な ん だ
『…楽しみだけど…僕の店は個性的だから…お客が来るか不安なんだよ…』
『…そんなことか』
『…そんなこと、だって?』
てんちょーが、少し厳しい顔つきになった。
『…君にはまだ子供だから分からないんだよ、大人の事情ってやつが』
てんちょーは、それだけ言うと店に向かってあるきだした。
『わかるわよ!!!!!!』
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