不思議の国のお伽噺。
がんばって、知らない間に無理してたあたしに、てんちょーはいつも優しくしてくれた。
一番最初に私を認めてくれたのも、てんちょーだった。
視界の思い出は、また一点に吸い込まれていく。
そしてまた、新しい世界が広がった。
『…貴方、誰?』
少し大きいシルクハット、長い金髪、そして
鋭く、射抜くようなその瞳。
外は真っ暗、明かりは月明かりだけ。
誰もが息を呑むような静寂の中、私は布団の上。
そして、布団の上に乗っかり、ナイフを刺そうとしている、少年。
暗闇であんま見えないけど、彼からは土臭い香りと、少しボロボロになったシャツが見えた。
『…どうやってここまで入ってこれたの?』
彼は、口を開こうとはしない。
『…何か言わないとわかんないわよ?
何がしたいのよ、あなた』
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