不思議の国のお伽噺。



『…っ』



『…何?

あたしの暗殺命令?』


『…よ』



『?何よ』




『助けてくれよ!!!!!!!!!!!!!!!!』




静寂の中、彼の声が響き渡った。
俯いた顔を上げて、私を見る。



『!』



その双方の目には、涙が伝っていた。



『な、にが』



『もういやだ、いやなんだよ!


俺たちもぅ、限界だ…!』



いやだ、いやだ、それの繰り返し。
これじゃ、まともに話もできやしない。


…、それに、今さっきの大声で、誰かが来てしまうかもしれない。




『落ち着いて、まずはそのナイフをしまいなさい』




まだ私の胸の上にはナイフが置かれたままだったりする。
…まだ刺されてはいないが。




私がそういうと、彼はナイフを床に投げ捨てた。
それを合図に、私もゆっくり起き上がる。
彼も布団に座り込んだ。




『…で、話せるかしら?』



目を見れば、焦点があっていなかった。

イカれてる。イカれてるよ、この子。



私には彼の泣いてる意味がよく分かってない。
まあ確かに、ただ泣かれただけじゃ状況なんか読み取れやしない。


私は、今の状況に、ただ唖然とすることしかできなかった。














.
< 80 / 159 >

この作品をシェア

pagetop