不思議の国のお伽噺。




『俺達は、孤児だ』



一言目から、私はあんぐり口をあけてしまいそうになった。



『孤、児?』



『ああ。
それで、孤児には、里親ができてくれることもあるだろ?』



木々のざわめきしか聞こえない。
私は彼の言葉を、下を向いて聴いている。
その言葉に、静かにうなずいた。



『そ、うね』




『俺も、里親に引き取られたんだ。

その人は良い人で、俺の友達のネムリネズミとか、兄弟とか、たくさん引き取ってくれた


なんでも、その人と奥さんの間には子供ができなかったらしくてさ。
俺たちは、たくさん甘やかされた。


その人には、感謝してもしきれない』



『う、ん』



『だけど、突然…その人は暗殺されたんだ』



…は?



『なんか、殺人現場を見られたとか、なんとかで。


奥さんも一緒に、逝ってしまった』




つい、顔を上げた。
すれば、シルクハットの彼は、膝を抱えてた



『俺たちに幸せは来ないと思ってた、でもその幸せを与えてくれたおじさんが殺されてから、あの日から…!


俺たちには地獄しかまってなかった』



強盗、証拠隠滅、殺人、拉致。
引き取られたのは、おじさんたちを殺した犯人。
その人たちに良いように使われてる。



『一回、逆らったんだ

そしたら、目の前で俺の仲間が殺された。』







.
< 81 / 159 >

この作品をシェア

pagetop