不思議の国のお伽噺。
湯船につかりながら、私は今までのことを思い返していた。
何の記憶も持っていない私が、この世界へ来て。
最初は、何も分からなくて、混乱してた。
その中でチェシャ猫と出会って。
赤ずきんにも出会った。
私は赤ずきんに歓迎されて。
だけど途中で、目を伏せようとしたときもあった。
そのときは、チェシャ猫に一喝されたんだっけ…。
そして、しーちゃんにもあったな。
しーちゃんは、キャラ濃すぎて最初はなれなかったけど、とってもいい人だった。
本当に、あなたには幸せになってほしかった。
所々出てくる記憶にくじけそうになったけど、チェシャ猫に、支えてもらった。
お風呂の中で目を伏せ、息を吹く。
湯船の水が、ブクブク泡立ち、消えた。
その一つの泡と、私の頭のもやが一つ、同時に消えようとしていた。
「あ、れ?」
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