不思議の国のお伽噺。




おかしい、何かが絶対おかしい。


何、何、何?


喉の奥まで来てるのに、出すことができない。



「な、によ、これぇ…!」



私が思い出そうとしてること、それは一体何?


湯船の中で震える手が、髪から落ちる水が、何かを思い出してる。





思い、出す?




そうか、私の思い出してない記憶の中に何かあるんだ。




全ての記憶に神経を張り巡らす。






そして、私は湯船から出ようとして、チェシャ猫の作った家の何かに触れたとき。




頭から、喉から、手から足から。






ある人物の名前を発していた。
































「チェシャ猫…だ…」











.
< 89 / 159 >

この作品をシェア

pagetop