不思議の国のお伽噺。
おかしい、何かが絶対おかしい。
何、何、何?
喉の奥まで来てるのに、出すことができない。
「な、によ、これぇ…!」
私が思い出そうとしてること、それは一体何?
湯船の中で震える手が、髪から落ちる水が、何かを思い出してる。
思い、出す?
そうか、私の思い出してない記憶の中に何かあるんだ。
全ての記憶に神経を張り巡らす。
そして、私は湯船から出ようとして、チェシャ猫の作った家の何かに触れたとき。
頭から、喉から、手から足から。
ある人物の名前を発していた。
「チェシャ猫…だ…」
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