不思議の国のお伽噺。
sp.2 あの川にのって。
次の日。
晴れて、強い日差しが私を照らしていた。
私とチェシャ猫は、草木を掻き分けある場所を目指して歩いている。
「チェシャ、猫…そろそろ溶けるよ…」
「あと少しだよ…あ!」
チェシャ猫は、私の前を指差した。
そこには、澄み渡った綺麗な川。
なぜか、見覚えがあるような気がしてならなかった。
「ここ渡るのは三千円だよ兄ちゃ…って、お前…チェシャ猫か?」
後ろから話しかけてきた男。
それは、ニット帽をかぶったおじさんだった。
「…は「おじ、さん?」
「…まさか…アリス?」
「うん…!」
「帰って…!
よかった、よかったよ…!」
おじさんは駆け寄ってきた。
そして抱き合った。
「おっと!アリス泣くなよ?
そろそろこの川も水が溢れそうだからな」
「へ?」
「この川はアリスが今まで流した涙の川だよ。
小さい頃はよく洪水になりかけたんだからな!
でも、あっちに行ってからはもっと増えて…
よく、がんばったな」
優しい言葉に、涙が出そうだった。
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