不思議の国のお伽噺。
あたしを見ず、変わらぬ木々を見つめて話すチェシャ猫。
「変わっていくことと、変わらずにいること
どちらが大切だと思う?」
「わた、し…?」
チェシャ猫にとっては、大切な問題なのかな。二人の間に流れる静寂。
それがこの問題の大切さを教えてくれた。
「私は…」
「変わっていくこと、かな…?」
私は、空を見上げた。
「変わっていかなければ、ずっと、ずっとその人は同じスタートラインに立ってることになるの
前に進むことも、後ろに戻ることもできない
私は成長せずにそのままの私でいることになる」
風が、間をすり抜けた。
「自分がしてしまった罪も、なにもかも反省できない。
だって振り向くことができないから。
罪を懺悔して、新しく進むことはできない
だって、スタートラインが変わることはないから。
ね?
こんな悪循環、私はたちきるべきだと思う。
変わっていかないということ、立ち止まってる人の手をとって、一緒に歩いていって。」
チェシャ猫の、手を握って笑う。
チェシャ猫は、私を見て、目を見開いた。
「変わることは、辛いけど、大切なこと。
その証拠に、今の私は、ここに帰ってきたばかりの時みたいに、ずっと泣いてないよ。
それは、強くなった、変わっていけたってことでしょう?」
そして、私たちを憂鬱にしていた、木々はなくなり、そこには花畑が広がった。
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