ただ一人、君を待つ。
プロローグ
―――春。
今年も…この日がやってきた。
あたしは、たんぽぽの沢山咲く丘の頂上にあるお墓へ、足を進めていた。
もう、10年経つんだね。
一つ、孤立した、回りにたんぽぽが異様に咲いたお墓の前まで歩いてくると、あたしはそこにしゃがんだ。
「おはよう。 今日も、来たよ」
あたしは新聞紙を広げ花瓶に入った枯れた花を取り、新聞紙の上に置いた。
「今日も良い天気になってよかった」
花瓶を洗いながらあたしはそう言う。
「今年もたんぽぽが沢山咲いてるねぇ」
―――返ってくることのない返事を待ちながら、あたしは問いかけ続ける。
一通り、お墓の掃除を終えるとあたしは線香に火を灯し、手を合わせた。
「―――報告。 あたし、結婚するの。 ちゃんと約束、守るんだよ?? おなかにね…子供がいるんだ。 女の子なの。 名前ももう決まったんだよ?? ……奏。 カナデ。 …良い名前でしょ??」
あたしは微笑みかけた。
「良い名前…でしょ。 ねぇ…カナ君??」
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