僕は君を追う
もう何を信じれば良いのか分からなかった。

「もう良いよ」

俺がため息まじりで出した言葉だった。
香奈枝は顔をゆがめた。

「良くない!」

香奈枝は涙声まじりの声で言った。

「お前は良くなくても俺はもう良い。疲れたんだよ」

俺は香奈枝を睨むように部屋を出ようとした。

「待って、翔太!」
「…」

俺は香奈枝の声を無視した。
こんなこと初めてだった。
香奈枝の声は絶対に無視しちゃいけないと思っていたから。
でもそんな俺の心情を簡単にねじ曲げてしまう事実が目の前にあった。
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