ハフピスライン
「お前、ここら辺じゃ見ない顔だな」
「貴様は誰だ。私の前から消えろ」

あの時の私は相手が誰だかも分からずにただ威嚇することしか出来なかった。

今と同じようにフードをかぶり、顔を隠しているのだから誰でも警戒はしただろう。
だけどあの時の私は村を出て誰も信用できず、ずっと一人ぼっちで辛かった。心の底から信用出来るのはたった二人だけだったから。

「そう威嚇するな。オレは敵じゃないはずだ」
「うるさい、私に構うな!」

力任せに私は腕を振り、魔王の胸を切り裂く。
だけど魔王は苦しむことも苦痛を上げることもなく、言う。

「今のオレにはお前が必要だ。カオスワルドのハーフを救えるのはトリアイナ、お前だけだ。こい、わが魔王の国、カオスワルドに」

初めて会ったはずなのに何故か嬉しかった。多分、頼りにされたことが嬉しかったのだろう。

そしてハーフを救う。その言葉を聞いた時、私は他のハーフがいる場所に行けることに安心を感じた。
だから私はカオスワルドに行くことを決めた。

その後は魔王が言った通り、私は安心からか気を失った。
気がつけばカオスワルドにいた。
< 127 / 195 >

この作品をシェア

pagetop