ハフピスライン
「オレはちゃんとトリアイナって言ってるんだ、二人きりの時くらい言えよ」
「断ると言っているだろう。魔王は魔王、名前は知らなかったから知りたかっただけだ」
「そうか、だがいつか言ってくれると嬉しいんだけどな」

私は絶対に言わないという意味で笑ってやった。
魔王は何か言おうとしたけど立ち止まった。

「待て、トリアイナ。ここからふざけた話はなしだ。あれが見えるか」

魔王が指さす方向には村がある。遠目だけど村が見える。

「見えるがあれでは本当にハーフの村とは分からない」
「違う。もっと手前、すぐそこの結界の境界線のことだ」

魔王は目の前に結界の境界線があるというが全く見えない。魔王の眼と私の眼は作りが違うのだろう。そうゆう魔力耐性は私にはない。

「残念だけど私には見えない。そうか、ここに結界があるのか」
「とりあえず、結界より先にはオレは入れない。だからトリアイナお前には魔力を無効化させてもらう」

「魔力を無効化? 魔力を削るということか。そんなことする必要があるのか」
「強力な魔力は警戒されるからな。それに後で役に立つだろう」

「しかしどうやってそんなことをする? 無駄に放出でもすればいいのか」
「そんなことするのはもったいないだろう。とりあえず……」

魔王が私に手を近付けてくる。何かあると警戒する。
< 129 / 195 >

この作品をシェア

pagetop