ハフピスライン
111が悲しい瞳で言う。だから私は追求しないでも111がなんの奴隷なのか分かった。

冷たい壁によしかかる。
重たい雰囲気を断ち切るため、私は話題を変えた。

「そういえばここではナンバーで呼んではいるけど、111の本名は?」
「そんなものとうに忘れた……そう言いたいけど、なんでだろう。色々なことは忘れたけどそれはちゃんと覚えている。私はルルシー。132は?」
「私はトリ……トリーだ」

危なくフルネームで言うところだった。さすがにフルネームはマズイだろう。例え111……いやルルシーが私のことを知らなくても誰かに聞かれていない保証はないのだから。

――しかしトリーという響きは懐かしい。昔、ライガが……いや止めよう。これは今、思いだすことではない。

「トリーか。ここに来たのはやっぱり村で差別にあったから?」
「いや、少し違う。確かに差別にはあっていたけど、それが直接の理由ではない」

そう、私がエデニアを去ったのはそんな理由ではない。

「そっか。私はずっとずっと差別を受けて、どこの村でも同じで辛い日々だったけど、ハーフの村のことを知ってここを探した。けど本当の地獄はここだった」
「来たばかりの私でも分かる。ここは最低の所だ。だけど諦めたら自分を失うことになる。だから希望を持っていれば必ず叶うはず」

そう、その希望はあと3日あれば叶う。
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