ハフピスライン
「残念? それは違うぞ。むしろ良かった。今までのハーフの恨み、数百じゃ足りないくらいだからな。安心しろ、きっちり殺してやる」

魔王はサイスマスの空間回帰に絶望どころか喜んだ。その笑みは私ですら恐怖した。なんとも深く静かな殺意のある笑みだった。

ハーフへの恨み。つまり魔王はハーフのためにサイスマスと戦うということ。それはハーフの味方であり、私は応援しないといけない。
本来なら、私がサイスマスを殺さないいけないが魔王ならやってくれるだろう。私の出る幕はない。

「フレイル! 信じていいんだな」
「トリアイナ! 常に信じるのは強きものだ。そしてオレは常に強き者の王だ」

目の合う魔王は言葉以上にその力強い目で理解する。

「はっ! トリアイナか。なるほど、道理で良い体してる訳だ。ハーフで一番喰ってみたかった奴だ。ハーフのトロワポテゥ―!!」

私がトロワポテゥ―だと知ると、その視線を私に移し瞬時に消えた。

来る!

それは分かるが肝心なサイスマスが見えていない。これはまずい、殺られる。

「――――――オレのトリアイナに触れるな、下種が!!」

魔王の低い声が聞こえた刹那。

背後ではサイスマスが振り上げていた手を握り潰し、頭を鷲掴みしている魔王がいた。その眼にはさっきのような輝きはなく、本気で怒っているように見えた。
そして、黒い炎によりさっきとは違い、瞬時に消滅した。
< 172 / 195 >

この作品をシェア

pagetop