ハフピスライン
「いつも言っていることだから呼び方は好きにするがいい。それよりも昨日のことについて教えてほしい」
「昨日のことですか。ほとんど一緒にいたと思いますよ。強いて言うならあのジークラフトとの戦闘くらいですか、トリアイナ様がいなかったのは」
「そうだ、そのあたりのことを詳しく知りたい。それにもう一人、黄金獅子と一緒にいたのを覚えている?」
「あ! トリアイナ様のことを呼び捨てにしていた奴ですよね。知り合いなんですか」
「知り合いと言えば知り合いだが、その男とも戦ったのか」

ここでもし戦うようなことがあれば、ライガが変わってしまった可能性が高まる。そうなると私の敵になってしまう。

「いえ、あの男とは戦ってません。私はジークラフトとしか戦ってません」

ホッと胸をなで下ろす。

とりあえずは良かったがひょっとすれば実力差で戦わなかっただけかもしれない。私の知るライガはそんなに強い魔力を持たなかったはずだし。

ここまで疑いたくはなかったけど……状況が状況なだけに不安は一つも残したくない。

「でも聞いてください。本当は言いたくなったんですけど、私はジークラフトとの戦闘に負け、殺されそうになった時、その男がジークラフトを突き飛ばして助けたんですよ? しかも私のことをハーフじゃなくて“人間”だと言い切るんです。敵に情けをかけられたのは初めてです。生き恥をさらせってことでしょうか」

もし……もしその言葉が本当なら、私は嬉しい。ライガは変わってない。私の記憶にいるライガはそのままだろう。
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