ハフピスライン
横腹を追いっきり殴られたような痛みが残り、オレが元いた位置には黒い狼が片手を払ったように上げていた。

たったそれだけの攻撃でこのダメージ。爪を立てられていたら、恐らく上半身と下半身が別々になっていただろう。
敵も実力差を分かっている。だからこその手加減なのか。

「この程度でよく、ここに来ようと思ったな小僧」
「何?」

モンスター型が人語を扱うのは初めて見て聞いた。それほどの知識を持ち、獣の領域を超えようとしているのだろう。

道理で強いはずだ。かなう訳がない。
オレはすで戦意を喪失して他の四人に戦いを頼もうと思った。

「なんだ、それは?」
「うっ」

左足に衝撃が走り、赤い液が噴出する。
とうとう爪を立てたようだ。オレの足からおびただしいほどの血が流れている。

「戦うつもりもなく、ここに来たのか。小僧!」
「痛っ」

右足からも血が流れ、オレは地面に膝がついた。立つことが出来ない。
そしてそのまま突進してくる黒い狼がオレを押し倒し、両手両足を抑える。
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