ハフピスライン
何をしたのか分からない。けど黒い狼はいつの間にかオレの前にはいなくなていた。

「やれば出来るじゃねぇかよ」

ジークが言う。
どうやらオレは出来たらしい……何を? 何をやったんだ。

「何をしたのか分かってないっていう面だな」
「しょうがないんじゃないか、無我夢中って奴だろ」
「あの程度か、つまんねぇ」

三人も何やら話している。
本当にオレは何かやったらしいな。けど、喜んでもいられない。まだ敵を倒した訳じゃないんだ。
少し離れた位置にはオレを睨みつけたまま停止している黒い狼がいる。

「たかだか小僧相手の殺気に退いてしまったことを恥じる。だが小僧、ここからが本番だ!!」

明らかに雰囲気が変わっていく。
体に突き刺さる殺気はまるで本当に剣先を突き付けられているように居心地が悪い。けどこれは引いてはいけない。

やってやる。オレだって魔力の解放が出来たんだ……あれ?
気がつかなかった。オレ、魔力完全に零だ。戦える訳がない。

オレの動揺に構わず、魔力を更に解放した黒い狼が消えた。眼で追えない地点でお終い。どこからでもオレを殺せる。
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