ハフピスライン
――――――しかし、オレは死に恐怖した瞬間、真正面が光り輝く。遅れて響き合う音が聞こえ、正面からの風圧で押される。

「ジーク?」
「おうよ」

冷静になって見るとそこにはジークが黒い狼の爪を剣で受け止めていた。
それを見た瞬間。オレは安心して膝から力が抜けた。

「マジで死ぬかと思った」
「後はオレ達に任せておけ」

肩を叩きながらヤクモが言う。なんと頼もしい言葉だ。

けどさっきは黒い狼にやられていた。だから心配するはずなのにどうしてオレはジークの背中を見ると頼もしく思えるんだろう。

「けど、出番ないかもな」
 
ライキがすかさず言った。意味が分からない。

「おーらよ」

ジークが剣を払い、そのまま黒い狼を吹き飛ばす。
それに合わせるようにヤクモの指が鳴り、一気に黒い狼を剣の束が包む。

「その程度の幻覚で、なめるな!!」

咆哮のような声。黒い狼はその声のみで剣を消す。
しかしそれでヤクモの攻撃は終わりではない。

「幻は時に実態にも成す。それが幻視の力」

もう一度行った指鳴らし、二本の槍が黒い狼を掠める。

一体いつ現れたのか分からない。けどそれは突如、黒い狼を掠めたと言ってもいい。
二本の槍だと分かったのはまるで×の字を描いていたから。
それでも直撃するはずだっただろう槍が掠めたということは、つまり黒い狼は見えていて避けたということだろう。
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