ハフピスライン
「鵜呑みにするお前は疑うことを知らないんだな。それはそれで偉いんだけどな、もう少し言葉を疑え」

オレの表情からヤクモが察したのか、急に言いだした。

「疑うって、本当のことじゃないのかよ」
「嘘は言っていない。何よりも嘘を言う必要はない」

オレはヤクモを見た。
それはつまり、オレは間違っていないということを主張して。

「はぁ、まだまだだな。ライガ、それは全て狼が聞いたトリアイナって奴の言葉だろ? 真意は本人から聞きな」

ヤクモが疑えと言ったのは狼の言葉ではない。トリアイナ本人の言葉。
黒い狼相手にはそう言ったけど、それはそう言うしかなかったということか。それとももっと他の意味があったのか。

「トリアイナ様が嘘を言うはずがない」
「けど、オレはその言葉を聞いていない。やっぱりオレはトリアイナとちゃんと話をしたい。それで判断する」

言い切った。オレは誰の言葉でもなくトリアイナの言葉を信じると。
それでもし、本当に魔界がトリアイナの居場所なら文句は言えない。救う必要がないのだから。

「好きにしろ」
「あぁ好きにさせてもらう。けどなんでお前はトリアイナに仕える気になったんだ。確かにトリアイナは優しい女の子だと思うけど」
「お前如きに話すことではないがいいだろう。私は当時、この森で暴れていた一匹の魔物でしかない。人間だろうとも魔物でも食べつくした。相手を殺すことで孤独を貫き通してきた。けどそこに現れたのがトリアイナ様だった」
< 88 / 195 >

この作品をシェア

pagetop