極道姫と僕の物語
ていうか……。
「見張るって……」
「修也くん、貴方は、新田(ニイダ)組って知ってる?」
「新田組…!?」
知らないわけがない。
新田組とは、ここら周辺を縄張りとしている、極道だ。
この名前なら、幼稚園児でも知っている。
ただ、名前だけで、悪い噂は聞かないし、何処にあるのかさえ知らない。
けれど、新田組は必ずこのどこかにいる。
そう小さい頃から、教えられてきた。
「よかった。知っているようね」
彼女は一緒に言葉を切り、僕をジッと見つめてきた。
その顔は、少し寂しげで……でも、何かを決意したように、キュッと拳をつくった。
「私……新田組組長の、娘なの」