極道姫と僕の物語
教室に入れば――ほら。
まただ。
「なぁなぁ望月!やっぱり、お前さ――」
「僕と花澄先輩は、付き合ってないよ」
入学してからの2ヶ月。
この質問が絶えることはない。
これもすっかり慣れてしまったので、にっこりと笑って相手の言葉を遮って否定する。
「でもさー、めっちゃ氷室先輩と仲いいじゃんよー」
「…まぁ、ね。でも、只の先輩と後輩だよ」
「それでも羨ましー!」
僕は曖昧に笑って、自分の席につく。
一体、いつまで同じ質問を繰り返すんだ?
朝の挨拶もなしに、いきなりあれ。
テンションが下がること、この上ない。
まぁ、皆が羨ましがるのはわかるけど。