【完】肉食系上司様〜獣族の女王と獲物の俺〜
「本当に泣き虫なんだから。」



記憶のパネルを全て見終わって戻って来た世界は、すでに再び時が進み始めていた。



「自分じゃないなにかのために泣けるのって、強いのかもね。」



ヒノエさんは切ないような、哀愁を帯びたような、そんな顔で笑う。



「私は自分のことにも泣けやしないのに。いっそ、楓ちゃんみたいに涙が流せたらいいのにね。」



そんなヒノエさんに、俺は言う。



「いいですよ。ヒノエさんは泣かなくても。変わりに、ここにいる間は俺が泣いてあげますから。」



精一杯強がってみたけどなんかカッコ悪いな。
< 199 / 322 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop