拝啓、
まっすぐ視線を逸らさず
私に向かって歩み寄る君。
私は金縛りにあったかのように一歩も動けないまま。
周りはそんな
私達に気付かず
ザワザワザワザワ
自分達の世界にいて、
ただの背景に変わる。
君が私の目の前にきて、
そして当たり前のように
私にぺこりとお辞儀して、
最後に色紙を渡した。
....色紙..??
首を傾げると、
「みんなからです。」
低くて優しい声色で教えてくれた。
そしてまた私に背を向けた。
私は手にした色紙と
君を交互にみる。
最終的な視線は君の背中。
視界が歪んでいくのを
ただただ感じた。
あぁ、終わってしまう。
あぁ、まだ鞄の中に想いは入ったままだと言うのに。
こんなにも
脳が。体が。心が。
訴えているのに言葉は口から飛び出すことが出来ない。
どんどん歪んだ視界が
一筋溢れた涙でクリアになる。
ぽたりと貰った色紙に
落ちた音がして、
濡れてしまうと慌てて
色紙に目を向けると、
沢山の
おめでとうございますに
紛れて不自然な殴り書きが目に入って........
......私は走り出した。