拝啓、



だから沢山の思い出は
消さないし消せない。

いっぱいとった写真や
プリクラも飾ったままだし、
貼ったままだ。


だけど理由なく会わないだけ。
恋人じゃないから、
会えない。

ただ、それだけ。


それだけだから、
と何度も言い聞かせた。

会えないつらさを
勉強に注いで紛らわした。
学科は違えど同じ大学を
目指している。


見ているものは
同じだと、
学校で参考書をよむ
健太を見て言い聞かせた。


たまに見つめていると
目があって笑ってくれる
健太に安心して。

契約破棄なんて
あり得ないと何度も
自分に暗示をかけて、
季節が過ぎるのを
ふとした瞬間すべて
使って願った。






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