幼なじみは年の差7歳【完全版】
……。
旅館に着くと、従業員全員に心配されてしまった。
それから、全員に「今日はゆっくり休んでね」と言われてしまった。
「すみません、明日からまた頑張りますので」
と、全員に頭を下げて回る。
だけど、その中に良明は居ない。私と入れ違いで警察署に行ったみたいだ。
(色々聞きたかったけど…仕方ないか)
みんなと少しずつ話した後、借りていた部屋へと戻る。
その瞬間、体が重くなり動けなくなってしまう。
やっぱり、怖かった。
良明が来ていなかったら私…どうなっていたのかな?
それを考えると震えが止まらなくなる。
その場にしゃがみ込み、動けなくなった私。どのくらいそこに居ただろう?
コンコン、とノックされた時、ようやく体が動かせるようになった。
「おーい、大丈夫かぁ?」
「よ、良明…?」
ドアの外、明るいその声に安心する。
良明は私がドアを開けるのを待っているようで、気配はするけどそれ以上は何も言わない。
ゆっくりとドアを開け、その姿を確認する。
「よう、大丈夫そうだな。
これ、おばさんが二人で食えってよ」
「ん…」
良明の手にはおにぎりと簡単なおかずが入った皿。それからペットボトルのお茶がある。
「俺も今日は終わり」
「そう、なんだ…」
いつもと変わらない良明。だから私も、同じように笑ってみせる。
だけどやっぱり、まだ体が震える。
「大丈夫か?」
皿を置いた良明が私の頬に触れる。
「…大丈夫、ごめん」
なんとか笑顔で返事をするけれど、やっぱり涙が溢れ出してきた。