幼なじみは年の差7歳【完全版】
「…もうこんなことが無いように、警官がちゃんと見回りしてくれるらしいから、大丈夫だよ」
「うん…」
そっと抱き寄せる良明は、いつになく優しい声をしていた。
ううん、私が知らないだけで良明はいつでも優しいのかもしれない。
美和にはいつも優しいみたいだし、他の人にだって…きっと優しいはず。
「…こういう時は、優しいんだね」
「…は?なんだよ、俺はいつだって優しいぜ?」
“私以外”には、いつだって優しい。
だって私、優しい良明なんて知らないもん。
「でもまぁ、お前と話してると喧嘩ばっかだったかもな。
お前だけだよ、俺に文句言ってくるの」
「…文句言われるようなことばっかりしてるからでしょ?」
抱き締められた状態で、また言い合いになってる。
なんで私たち、いつもこうなんだろう?
顔を合わせれば喧嘩、喧嘩、また喧嘩。
…私が色々言っちゃうから、良明も色々言うのかもしれない。
「…お前な、なんでこんな時に馬鹿みたいなこと言えんの?
普通、抱き締められながら文句言う?
…昔のお前の方が可愛かったよ、全く」
「なっ…む、昔の私!?」
直後、「しまった」と言うような顔で私を引き離した。
昔の私…それは、いつ頃の私を言っているんだろう?
良明は困ったような顔で私を見ている。
それから、諦めたような顔でため息をついた。
「…お前さ、俺のことマジで覚えてないわけ?」
「………」
良明はやっぱり諦めたような顔で、言葉を続ける。