幼なじみは年の差7歳【完全版】
「…ねぇ!どうやってあいつらを倒したの?
急所を突くとかそういうのをやって気絶させたの?」
ふ、と思い出した。
僅かな時間の中でどうやって4人を倒したのか、良明に聞いてみる。
「急所、ねぇ…。確かにドラマとかだとすぐ気絶するけど、あれって実は嘘。
急所があちこちにあるのは間違いないけど、だからってそこを狙っても気絶なんてめったにしない」
「…そうなの?」
「うん。むしろ気絶以上に危険。殺しちゃうかも」
それから良明は話し出す。
時々私の顔を窺いながら、ゆっくりと。
「急所を狙って何かをしたとする。たとえば首の後ろをトンッてやるのをドラマとかで見るだろ?
あれ、当身(あてみ)って言うんだけど、気絶させるには加減が難しいんだ。それに手の角度とかも関係してくる」
言いながら手を何度も振り下ろす。
時には素早く、時には角度を変えながら。
「急所ってさ、マジでヤバいんだよ。
俺は急所イコール死に一番近い場所ってイメージ。
だから俺は、遊び半分で急所を狙って打ったりしない」
…真剣な顔。だから良明の言葉はホンモノなんだと感じる。
でも、それなら良明はどうやって4人の男を倒したんだろう?
「さて本題。俺がどうやってあいつらを倒したか?それはね…」
「それは…?」
真剣な顔がふっと柔らかくなる。
それから微笑むようにして私に言う。
「遊び半分じゃなくて、本気だったから狙った。
狙った場所とやり方は企業秘密。悪用されたくないしね」
「え…」
それって…急所を狙ったってこと…?
危険だって今散々言ったはずなのに…。
「…良明って何者?忍者?スパイ?」
ただの高校生では知らないようなこと、出来ないようなことを良明は知っているし、出来る。
その理由が知りたい。
だけど良明は人差し指を口元に持ってきて、シーッと言った後に笑った。
「俺の秘密は誰にも話さない。
たとえお前が俺の嫁になったとしても…ね」
良明の謎、それがわからないまま時間だけが過ぎていく。