幼なじみは年の差7歳【完全版】


何も変わらない、美和の姿。
まだあまり外は歩かないみたいで、日に焼けた私たちとは対照的で肌は白いままだ。

中へと促され、おばさんに挨拶した後に美和の部屋へと向かう。


「バイト出来なくてごめんね。良明くんも、代わりに出てくれてありがとう」


深々と頭を下げる美和に、良明は言う。


「いいよ、俺は好きでやったんだもん。
で、バイト代は美和ちゃんにあげる」

「え?ちょっ…ダメ、良明くんが働いたお金だよ?
私…何もしてないもん。貰えないよ」

「いいんだよ、これは罪滅ぼしなんだから」


どきん、と胸が鳴る。
良明が今から事実を話す。それがわかった。
美和はよくわかっていない顔で私と良明を交互に見る。


「俺、美和ちゃんにヒドいことしたんだ。
…俺はね、元カノと体だけの関係を続けていた。
“私と離れたら良明の傍に来る女を殺す”って元カノに言われたから、美和ちゃんを守る為に関係を続けた」


良明は隠さず言葉を続ける。元カノとのことがあったその日から、事故に遭ったあの日のことまでを全て…。
美和を真っ直ぐに見つめ、また、美和も良明を真っ直ぐ見つめたまま…。


………。


そして全てを話し終えた時、美和は小さく笑った。


「良明くんは、元カノさんとまだ付き合ってるの?」


小さく笑った顔は、少しだけ寂しそうに見えた。


「…もう別れた。もう脅しには乗らない」

「そっか」


良明の言葉を聞いて、美和は何を思ったんだろう。
良明の手をそっと取り、腕時計に静かに触れた。


「私が、良明くんに贈った時計…だよね?
冬馬兄ちゃんと一緒に選んだ時計…。
ごめんね、見ても全然思い出せない」


数日間のうちにあった出来事。それを聞いた美和はやっぱりショックを受けているみたい。
良明の手を掴む美和は、少しだけ震えている。


「…私は良明くんを許したんだよね?」

「…そうであってほしいと俺は思ってる。
それを実際の言葉で聞いたわけじゃないからわからないよ」
< 135 / 278 >

この作品をシェア

pagetop