幼なじみは年の差7歳【完全版】


「美和、あとでコレな」


そう言って私の唇に触れ、その指を自分の唇に持って行った。
それは多分、キス…。
だから冬馬兄ちゃんは少し恥ずかしそうに笑ってる。

幼なじみとしての距離じゃなく、もっと近くに冬馬兄ちゃんを感じる。
恋人として、私は冬馬兄ちゃんと向かい合っている。


「…頭、撫でられるの嫌い?」


だけど、もう一度髪に触れようとすると冬馬兄ちゃんは離れるし、手で制止する。


「なんか恥ずかしいじゃん」


そう言うけれど…私はいつも撫でられてるし、いつも恥ずかしい。


「…冬馬兄ちゃんって、意外と自分勝手だよね」

「いやいや、そんなことはない…はず。
撫でるのは好きだけどさ、撫でられるのは慣れてないんだよ」


コーヒーを口に運ぶ冬馬兄ちゃん。
そんな時に出来た隙。
さっき撫でた時は恐る恐るだったけれど、今度は「これでもか!」と言うくらいに撫で回してみる。

…直後、冬馬兄ちゃんはコーヒーを吹き出しそうになり、その後げほげほとむせてしまった。


「あ、いや…ごめんなさい」


謝る私をニヤリと見、私がしたのと同じように「これでもか!」と撫でてきた。

時間なんて関係なく賑わっている店内。
その片隅のテーブルで私たちは向かい合い、私は頭を撫で回されている…。


「ご、ごめんなさい…許してください…」


数名の視線を感じながらも冬馬兄ちゃんは数秒間頭を撫で続け、解放された後、すぐに店を出ることにした。


「旅の恥はかき捨てって言うだろ。
よし、次行こう」


…いつもと冬馬兄ちゃんのテンションが違うのは、仕事明け寝不足の状態で遊園地に来たからなのかもしれない。とその時に気が付いた。
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