幼なじみは年の差7歳【完全版】
誰にでも優しくて、クラスの人気者。
表の顔はそう…。
だけど裏の顔を、私は知っている。
「…なんか変わったね。可愛くなった。
今、高校どこ通ってんの?」
全身を舐め回すように見る彼に、私は答えることが出来なかった。
全てが、忘れようとしてた過去が、一気に頭の中に溢れる。
何も変わらない彼は、私を見て笑ってる。
私をオモチャのように扱った彼は、罪悪感なんてこれっぽっちも感じずに笑ってる。
「ねぇ、それ俺の女なんだけど?」
ふっと体が動いた時、良明と彼が目の前で視線を交わしていた。
「…誰?彼氏?」
彼は少し冷たい目で良明を見た後、誰にでも見せる優しい顔で笑った。
「どーも、真壁 良宏です。
麻実とは中学一緒で、元カレってやつ、かな」
元カレ…。
違う、彼氏とか彼女とかそんな扱い一度も無かった。
私は、ただのオモチャ――。
「…あぁ、なるほど」
…良明は小さく言い、静かに笑った。
それから私の手を引いて歩き出す。
「え、ちょっと。何、挨拶も無し?」
彼が良明の肩を掴み、それから私の手を取った。
「麻実、こんな奴と一緒に居ないで俺らと来ない?
俺、今日友達と来てんだよ。そっちの方が楽しいよ」
…楽しい?
何を企んでるの?
また私を、オモチャにする気…?
「中学ん時の友達も来てるんだ。お前の変化見たらみんな驚くと思うよ。
中学ん時のお前、全然目立たない奴だったもんなぁ。
なぁ、あんた知らないで付き合ってるっしょ?
中学ん時こいつ、分厚いメガネでいつも三つ編みにしてたんだよ」
………。
私の過去を話す彼は、良明が何も知らないと思ってる。
何も知らない人が聞けば普通は引くだろう事実。
良明は、過去の私を知ってた上で話を聞いてくれた。だから…今でも近くに居る…。
それを知らない彼は、次から次へと過去を話す。
私と良明を引き離すかのように。
自分の元へ私を戻そうかとするように。
私を再び、オモチャにするために。
「て言うかさ、過去が何?
俺と麻実が一緒に居ることに過去なんて関係あるの?」
…良明の答えはそれだった。