幼なじみは年の差7歳【完全版】
……。
それからどれくらいそこに居ただろう?
二人並んでベンチに座り、行き交う人たちをただぼんやりと見つめていた。
みんな楽しそうな顔して笑ってる。
…私たちとは大違い。
「…なぁ、これからどうしたい?」
良明が問うけれど、返事はしなかった。出来なかった。
本当は今すぐここから離れたい。遊園地から出たい。
でも、それは私の単なるワガママ…。
「もう帰りたい?」
良明が私を見、私は良明を見た。
ぶつかる視線。良明は、少し寂しそうな顔で笑う。
「よし、帰ってカラオケでもしに行こう。
美和ちゃんには俺から連絡しとく」
いつも通り笑う良明に、私は何も言えないまま手を引かれて歩き出す。
私も、いつも通りに笑いたかった。
だけど出来ない。体が上手く動かない。
私が「私」じゃなくなってしまう…そんな感覚。
「…良明」
「ん」
「離さないで」
手を離したら体が消えてしまいそうだった。
「私」が消えてしまう…過去の、弱い私に戻ってしまう…。
「…ちゃんと掴んどけ。そうすりゃ大丈夫だから」
良明は少し強めに手を握り、私の体を引く。
「お前の過去を知ったって俺は何も変わってねーだろ。
だからこれから先だって、俺は変わらない」
…小さく言ったその言葉が、私の心を温めていく。