幼なじみは年の差7歳【完全版】
…良明は本当に私の手を離さなかった。
遊園地を出る時も、駅までの道を歩いてる時も、駅に着いて切符を買う時も。
「…もう、大丈夫だよ?」
切符を買いにくそうにしてたからそう言った。
強がりとかじゃなくて、本当にもう、大丈夫だと思ったから。
「いいから黙っとけ。俺は離さないって決めたんだ」
…だけど良明は手を離さない。
だから仕方なくその手に握られていることにした。
「強情だよね、良明ってさ」
「放っとけ。俺はトコトンやる男だ」
…いつもと同じ、馬鹿みたいなことで笑い合ってる。
もう大丈夫。
だけどその時、良明がため息をついた。
「あー…こりゃあ混むな」
周りはみんな遊園地からの帰り客。
山のように荷物を持って電車を待っている。
「…ウチにあるじゃん、ぬいぐるみ。
あれさ、お袋の趣味。あちこちの遊園地行って遊んでる。
親父も注意すりゃいいのになぜか一緒に遊びに行ってるし」
苦笑気味に笑い、遠くにある観覧車を見た。
「人間ってさ、いろんな奴いるじゃん?
冬馬さんみたいに物腰の柔らかい人とか、俺のお袋みたいにデリカシーの無い奴とか。
…すげー嫌な奴と出会ってもさ、言葉を変えれば“良い経験”だろ?」
電車の到着を知らせるアナウンスがホームに響く。
だけど良明は笑って私を見た。