幼なじみは年の差7歳【完全版】
――……。
しばらく電車に揺られ、降りる駅に到着した時。
良明は私の手を乱暴に掴んで歩き出し、人混みを抜けて改札に切符を通す。
その間、良明は無言だった。
少し手が痛かったけど、私も無言のまま歩き続ける。
(…何か怒ってる?
私が、体を預けてしまったから…?)
守るようにした良明に体を預けた私。
でも、そこまではされたくなかったのかもしれない。
事務的な行動。それに私は私事を交えてしまった。
されたくなかったことを私はしてしまったのかもしれない。
「良明」
前触れなく立ち止まった私と先を行く良明の手が離れる。
「ごめんね」
そう言った私の手をもう一度掴む良明。
「…何がごめん?」
「…何か、怒ってると思ったから」
だから「ごめん」て言った。良明との距離を、保つ為に。
なのに、良明は余計不機嫌そうな顔をした。
「別に怒ってないから、ごめんなんて言葉は要らない」
「でも、」
「いいから。俺は怒ってない」
…でも、やっぱり怒ってるよ。
いつも笑ってる良明が、今は不機嫌そうに私を見てる。
ズキズキと、胸が痛む。
「…怒ってるわけじゃないんだよ。
ただ、考えてた」
「…考えてた?」
帽子を更に深くかぶった良明はまた歩き出す。
考えてたって、いったい何を…?
…けど、良明は答えを言わない。
ただ歩き続け、カラオケ屋の前で立ち止まる。