幼なじみは年の差7歳【完全版】


慣れた手つきで受付を済ませ、個室へと向かう。
その間、良明が私に話しかけることは無かった。
手は繋いでいたけれど、言葉は無かった。


…中に入ってから少し後、事前に頼んでいた飲み物が届く。
店員がドアを閉めてすぐに良明は私を見た。


「…あのさ、ちょっとビックリしただけ。
お前、嫌がるかと思ってたから」

「え…?」

「だから。電車で、俺がしたこと」


それって…私を抱き寄せたこと…?
だってそれは、事務的なことでしょ?だから私は、何も言わないでそこに居た。


「…だって、狭かったから“仕方なく”でしょ?」

「だからってお前、俺に抱き締められて良かったわけ?」

「…しょうがないじゃん、動けなかったんだもん」


自分の気持ちを隠しての会話。

仕方なかったから。
狭かったから。

そんな言葉を並べていく私に良明は言う。


「…俺は“仕方なく”やったわけじゃないよ」


それって…どういう意味…?

良明は私を真っ直ぐに見るけれど、それ以上言葉を続けることは無かった。
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