幼なじみは年の差7歳【完全版】
………。
良明は何も言わない。
私をただ見つめ、それからため息と共に目を伏せた。
そして目を開けた時、ポケットからハンカチを取り出して私に握らせる。
「俺、お前と一緒に居ると凄く楽しいよ。
ずっと近くで話していたいから手を握る。
電車ん中で、周りに潰されそうになってるお前を見て…手を握ってるよりは安定するかと思ったから抱き締めた」
ハンカチを握らせた手。それを良明はそのまま掴んで離さない。
「…好きか嫌いかを言ったら俺はお前が好きだ」
だけど、と言葉を続ける。
「…だけど、一緒に居たいとは思うけど、正直に言えば今以上にお前を求めたいとも思わない」
つまりそれは、
友達以上には思えないということ。
…友達としては好き。
だけど付き合ったりとか、キスしたりとか、そんなことをしたいとは思わない。ということだ。
ずっと友達として、良い関係で居たいと良明は思ってるんだ。
「…もうわかったから、手、離して」
もうわかった。
…手を握られたり、抱き締められたり、それは良明からすれば「普通の行為」。
私が勝手に意識してただけで、良明は別になんとも思ってなかったんだ。
「化粧直してくるね」
だから私は、
いつも通りに声をかけて、いつも通りに笑って見せた。