幼なじみは年の差7歳【完全版】
……。
車を駐車場に止めて、最初に冬馬兄ちゃんの時計を買いに行く。
店に入ってすぐ、冬馬兄ちゃんは店員と店の奥で何かを話し出した。
…そして戻ってきた時、少し残念そうに笑った。
「修復は可能だけどかなり時間かかるらしい。
取り寄せなきゃ無理っぽいし、値段も結構かかるみたい。
だから、新品で別のを買った方がいいかも。だって」
「あ、そうなんだ」
私は元々新品をプレゼントするつもりだったけど、冬馬兄ちゃんは修復も考えていたみたい。
それくらい気に入ってくれてたのかな?って思うと少し嬉しくなる。
「じゃあ、似たようなデザインの探そっか」
「そうだな」
昔は家族とお金を出し合って買った腕時計。
今日は、私一人が冬馬兄ちゃんの腕時計を買ってプレゼントする。
予定だったんだけど…。
「…ちょっと、これは…高すぎるよ、な…」
…似たデザインのを見つけたけれど、私の手持ちじゃ足りそうに無い。
お小遣いの他に良明くんが渡してくれたお金も持ってきているのに、それでも足りない。
(…他の物にするしかないかなぁ…でもこれ、ほんとに似てるんだよね…。
だけど、考えたってお金は増えないし…諦めるしかないかな…)
残念だけど仕方ない。
そう思って別の物を見ようとした時、冬馬兄ちゃんが店員に声をかけた。
「これ、お願いします」
…指差したのは、私一人では払えないその時計。
そして会計をカードで済ませてしまう。
私は呆然とし、冬馬兄ちゃんと店員のやり取りをただ見ていただけだった。