幼なじみは年の差7歳【完全版】
その場で時計をつけ替えて、元々つけていた時計を箱に収めて持ち帰る。
店員の丁寧な挨拶を背中に受けながら、冬馬兄ちゃんに手を引かれて店を出た。
「あの…私、プレゼントしてない、よ…?」
「そうなっちゃったね」
そうなっちゃったね、って…笑い事じゃないよ。
あんな、高そうな時計…ううん、実際高いんだけど…それをポンッと買っちゃうなんて…。
「後から請求させてもらう」
ニヤリと笑い、私の頭に手を乗せた。
うぅ…頭がクラクラする…。
お小遣いを丸渡ししても払い終わるまで数ヶ月はかかる…。
「そんな顔するなよ、冗談だから」
「え…冗談…?」
「俺が気に入ったから独断で買った。
自己投資だから気にしなくていいんだよ」
でも…それじゃあやっぱりプレゼントしたことにはならないよね…。
「美和。欲しい物、決まった?」
「あ…ううん、全然…」
て言うか…高い時計を買った冬馬兄ちゃんを見た後に、何かねだるなんて…出来そうにない。
「俺が選んでもいい?」
「いや、あの…遠慮します。ごめんなさい」
時計の値段を気にする私。それを見て、冬馬兄ちゃんは笑った。
「ここだけの話。
実は俺、かなり金貯めてる。て言うか貯まってる。
ここ数年は仕事ばっかりだったからね。
たまには自己投資してもいいかなって思ったんだ」
そう言った後、私の手を強く握った。
「美和、勝手に決めてごめん。
せっかくプレゼントしてくれるって言ってたのに」
その顔は、少し後悔したような顔だった。
「…私が何かプレゼントしたら、喜んでくれる?」
「もちろん」
「…時計に及ばなくても?」
時計には及ばないだろうけど…喜んでくれるのかな?
「及ぶとか及ばないとか関係ないよ」
そう言ってくれたから、なんとか笑顔を見せることが出来た。