幼なじみは年の差7歳【完全版】
画面には、楽しそうに笑う良明くんと、優しい笑顔の九条さんが写し出されている。
「先輩ってさ、俺らの前ではいっつもニコニコしてんだ。
だけど、遠くから俺らを見る目は凄く冷たい。誰も気付いてないけどさ。
“何か”を隠してるんだよ、きっと。
今までは別に気にしなかったけど、美和ちゃんとの繋がりが出来たなら話は別」
そう言いながら机に置いてあったペットボトルの紅茶を口に運ぶ。
それを見た麻実ちゃんは何かを言おうとしたけれど、諦めたような顔で良明くんに携帯を返した。
それから私を見て、小さなため息をつく。
「…冬馬さんが、“美和の傍に居てあげて”って言ってたのはコレが原因なんだね。
それ以外冬馬さんは言わなかったけど、わざわざそんなことを言うなんて変だなぁって思ってたんだ。
なんかさ、冬馬さんって言葉足らないから疲れちゃうよね。
まぁ、心配させたくないから言わないんだろうけど」
ぼやいた麻実ちゃんはその後いつものように笑う。
「私が傍に居てあげるから大丈夫」
「ん…ありがと」
それから、良明くんも私を見て笑う。
「俺も一緒に居る。で、一緒に帰れば安心だろ?
こいつの家は学校に近いし、わざわざ美和ちゃんとこまで行くの大変じゃん?
だから俺が一緒に居る」
「…でも、良明くんの家だって私のところとは結構離れてるよ?」
“何か”が起こると決まったわけじゃない。帰り道くらい一人で大丈夫。
そう思って言うけれど、良明くんは私の目を見たまま話し続ける。
「“何か”あってからじゃ遅いじゃん。
だから俺は一緒に居たいんだよ。
で、何も無いなら無いで一緒に居られることを喜ぶだけ」
そんな風に笑顔で言われたら、もうそれ以上断ることなんて出来なかった。
“何か”があってからでは遅い。
…何も無いのが一番良いけど、「何も起こらない」と保証されているわけじゃない。
だから、良明くんは私を見て笑う。
「俺のせいで、ごめんね」
…良明くんのせい?