幼なじみは年の差7歳【完全版】


美和ちゃんを守る為に俺は、傍に居たはずなのに。
何も出来ないなんて、傍に居た意味が無い。


「…良明…?」


ふと、名前を呼ばれた。


「大丈夫…?」


霞む視界の中で、息を切らす麻実を確認した。
泣きそうな顔が、そのまま泣き顔に変わる。
また俺、麻実を泣かせちゃった。


「…なんでここに居る?」

「なんでって…冬馬さんから連絡もらって…あんたが怪我してるかもって聞いたから、探してたんだよ…?」

「…そっか」


俺に近づいて、口元に触れる麻実はやっぱり泣いている。
こんな顔、させたくなかったのに。


「なぁ、前にさ、“今以上にお前を求めたいとも思わない”って言ったじゃんか」

「…こんな時に、何言ってるのよ…」

「だけど俺、今は違うんだよ。
お前にずっと触れていたい」


麻実をそっと抱き締めると、麻実の体が緊張で動かなくなる。
それでも、強く抱き締める。


「麻実が好きだ」


それだけを言って、体を解放する。


「俺は美和ちゃんのところに行く。
お前は帰れ」


麻実を巻き込みたくない。これから俺がすることを、見せたくない。


「…嫌。私も美和のところに行く」

「お前、何バカ言ってんだよ」

「バカはあんたでしょ!そんな傷だらけで何が出来るのよ!」


だからって…麻実を連れてくなんて出来ねぇだろ…。


「お願い、連れてって。
一人で待ってるなんて嫌なの」

「…危ない奴らが居るんだぞ?
捕まったら何されるかわかんねーんだぞ?」

「そんなことわかってる。
だけどあんたを一人で行かせるなんて出来ないよ」


…俺はお前を連れて行くなんて出来ないんだけどな…。

でも、いつまでもここで言い合っていても仕方ない。
こうしてる間に美和ちゃんは何かされてるかもしれないし、冬馬さんは一人で乗り込んでいるかもしれない。


「俺の前には出るなよ」


それだけを言い、手を握って走り出す。
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