幼なじみは年の差7歳【完全版】
「美和…」
気を失っているみたいで、体が動くことはない。
「…九条さん、どうしてこんなことをするんだ」
「どうしてって。冬馬さんがこの子から離れないからじゃない」
穏やかだった顔が、少しずつ変化していく。
冷たく、氷のような目…。
ゆっくりと歩き、美和の髪を静かに撫でた。
「まるで子供みたいな寝顔。
考えも幼稚。危機感も持たない。
馬鹿よね、私が声をかければ何人だって集まるのに」
…何人だって集まる。それは、美和と良明くんが数名に襲われたと言っているのと同じ。
そして、今この部屋には彼女と美和、俺以外には居ないけど、すぐに人が集まると言っているのと同じ。
「どうして冬馬さんみたいな人がこの子と一緒に居るの?
わからないなぁ。こんな子供のどこが良いんだろ?」
美和と彼女の年齢差はそう無いけれど、確かに美和よりも大人びた顔をしている。
彼女は美和の体を揺すり、それに反応して小さな声が漏れる。
(…どうする?どうすればいい?
手錠は外れない。携帯にも届かない)
ゆっくりと体を起こした美和が俺を見て状況を理解する。
そして美和の隣に居たはずの彼女は、少し離れた椅子に座って微笑んでいる。
「こんばんは、山寺 美和ちゃん」
グラスに入った何かを飲み、もう片方の手にはナイフが握られている。